健康のススメ

「毎月、生理のたびに寝込むほど痛くて、鎮痛剤が欠かせません」
そんなお悩みを抱えて当薬局に来られたのは、20代後半の女性でした。最初にお話を伺ったのは、秋が深まる頃。特に寒くなってくるとお腹の冷えがひどくなり、生理が始まると下腹部にズーンと重たい痛みが続き、仕事にも集中できないほど。鎮痛剤を飲んでもスッキリ効かず、なんとなく体調がすぐれない日が毎月何日も続く、とのことでした。
さらに手足が氷のように冷たく、夏でも靴下が手放せない冷え性体質。便秘気味で、肌も乾燥しやすいタイプでした。「生理痛は体質だとあきらめていたけど、薬に頼らずどうにかしたいと思って…」と、漢方相談に来てくださいました。
東洋医学では、生理痛は「気血の巡りが悪い」ことが原因とされます。特にこの方のように冷えを伴う場合は、「寒邪(かんじゃ)」と呼ばれる体を冷やす要因が子宮の血流を妨げて痛みを起こすと考えられます。舌診・脈診・生活習慣の聞き取りを総合的に行ったところ、明らかに“久寒”があるタイプであると判断しました。
そこで、子宮周りをやさしく温めながら、血の巡りをスムーズにしていく漢方と牡蠣肉の錠剤をお出ししました。初回から3ヶ月ほどは、まずは体の土台を整える期間とし、併せて「冷たい飲み物は控える」「入浴はシャワーではなく湯船に浸かる」「下腹を冷やさない」などの生活養生もお願いしました。
すると、2回目の生理のときには「薬の量を減らせたかも」と変化が見られ、半年が過ぎる頃には「薬なしでも我慢できる程度の日が増えてきた」とのこと。さらに1年後には、「痛みを恐れて生理が来るのが怖かったけど、今は落ち着いて過ごせるようになりました」と、心にも余裕が出てこられた様子でした。
現在も、冷えと体調を整える目的で煎じ薬を継続されていますが、生理のたびに鎮痛剤を飲んでいた頃とはまったく違う日常を送られています。
生理痛や冷え性は、“体質だから仕方ない”と我慢してしまう方が多いのですが、体の内側から整えることで、本来持っている自然なリズムが戻ってくることもあります。